以前、グリーン・エレクトロニクス No.17 (CQ出版, 2014年) の中の第6章 篠原 真毅「マイクロ波無線電力伝送の理論と実験製作」をみて、そこに書かれているLEDを光らせるレクテナ作成をしようとしたことがあった。その時にはショットキーバリアダイオード 1SS106が入手できず、代替品らしきもので試したがうまく光らせることができなかった。ダイオードの問題だけではなく、アンテナの長さも適当だったので問題があったと思われる。
最近(といっても1ヶ月以上前)検索をしていて "レクテナを作ってみた.Wi-Fiルータや電子レンジに近づけると光るよー… "という2016年のツイート(かなり以前です…)をみつけて興味が再び湧いたので、部品を集めてちゃんと光るレクテナ作成をしてみることにした。
部品
今回試した際に利用した部品は以下の通り。
ダイオード
- ショットキバリアダイオード 1SS106
- 在庫のあったRPEパーツから購入(1本95円)
- 製造中止になってから時間が経過しているので入手困難品
- ゲルマニウムダイオード 1K90 (光らせることができなかった)
- RPEパーツから購入
- ショットキーバリアダイオード 1N60 (WiFiでは光らせることができなかった)
- 秋月電子通商から購入
- ゲルマニウムダイオード 1N60 (光らせることができなかった)
- 秋月電子通商から購入
- 高周波用ショットキーバリア・ダイオード 1SS154
- 秋月電子通商から購入
- 表面実装用ショットキーバリアダイオード RB751S-40
- 秋月電子通商から購入
LED
- 高輝度5mm赤LED OSR5MA5111A-VW
- 秋月電子通商から購入
- 5mm赤色LED OSDR5113A
- 秋月電子通商から購入
回路
回路は、上記のグリーン・エレクトロニクス No.17 の記事やツイート通り以下のようになる。
アンテナ部分の長さは WiFiの2.4GHzの半波長で62mm。おおよそ6cmと考えた。
結果
以前試したときは1SS106の代替品として使った1種類のダイオードがうまくいかなかったので、ダイオードを複数試してみた。1SS106も入手できたので試した。
次の表にダイオードの順方向電圧(Vf)、WiFiアクセスポイント (Buffalo WCR-1166DS) 上で光ったか、電子レンジの上(もちろん、「筐体の外部」です)で光ったかを示す。○は光ったこと、×は光らせることができなかったことを示す。
ダイオード | 順方向電圧 Vf (V) | Wifiアクセスポイント | 電子レンジ |
1SS106(日立) | 0.210 | ○ | ○ |
1K90 | 0.383 | × | × |
1N60(ショットキー) | 0.327 | × | ○ |
1N60(ゲルマニウム) | 0.521 | × | × |
1SS154(東芝) | 0.399 | ○ | ○ |
RB751S-40(ローム) | 0.321 | ○ | ○ |
光ったものでもWiFiアクセスポイントから少し離すと光らなくなったので、WiFiアクセスポイントのアンテナ位置に合わせないと光らないと思われる。
ダイオードの順方向電圧は安物のデジタルテスターで1回測っただけである。
ダイオードの順方向電圧は、1SS106が他と比べて明らかに低かった。また、実際に光らせることを試してみると1SS106を使ったレクテナが最も明るく光ったと思う。1SS106を使ったレクテナではLEDの足を曲げただけでアンテナ部が55mm(OSR5MA5111A-VW)から58mm(OSDR5113A)くらいであったが、アンテナ長を調整をしなくてもWiFiで光った。
LEDは、安価な5mm赤色LED OSDR5113Aを主に使った。WiFiアクセスポイントで光ったダイオードは、高輝度5mm赤LED OSR5MA5111A-VWでも試したがあまり変わらなかった。
1SS154とRB751S-40はアンテナの長さを調整しないとWiFiのアクセスポイントでは光らなかった。RB751S-40を利用してLEDの足を曲げた場合のアンテナ部は、OSR5MA5111A-VWで45mm、OSDR5113Aで50mmくらいであったが、6cmくらいに合わせる(延ばす)必要がある。表面実装ダイオードRB751S-40の場合には半田付けできるようにLEDのリードを内側に寄せたので1SS106の場合よりもアンテナ長が短い。1SS106を利用した場合には、LEDのリードを外側に曲げて1SS106が収まるようにする必要があるので、LEDのリードだけを使った場合のアンテナ長が長くなる。
1SS154はAliexpressから製造メーカー不明のものを購入して試したが、そちらを使ったレクテナは光らせることができなかった。そのVfを測定すると0.5Vくらいで、Vfからみると光らなそうな感じであった。光ったレクテナで使った秋月電子通商で購入した1SS154は、販売ページによれば東芝セミコンダクター製とのことである。最初Aliexpressで購入した1SS154でうまくいかなくてやる気がなくなりかけていたが、1SS106で試したらあっけなく光ったので他のダイオードでも光るか気長に試す気になった。
電子レンジもあまり電波が漏れないようになっているので、レクテナが光る場所を探す必要があった。上記の表では光っていないダイオードも電子レンジの機種や出力、置き場所によっては光るのかもしれない。
表面実装部品のはんだ付け
表面実装用ダイオード1SS154や RB751S-40は小さく、はんだ付けの際の部品の固定に困った。もっと良いものがあるのであろうが、薄い粘着性パッドを使うことにした。手元にあった非常に古い次のものを使ったが、薄く小さな耐震マットでも同様のものがあるように思う。
半田付け前の準備は次の通り。透明マットの上のごみのような黒いものが表面実装用ダイオード RB751S-40である。RB751S-40は1608サイズ、つまり、1.6mm×0.8mmと小さい。LED(OSR5MA5111A-VW)はハンダ付け時の位置から少し下にずらしてある。
半田付けの直前の様子は次の通り。RB751S-40上にかすかに見えるカソードマークが右側になっている。LEDの足の長いアノードも右側になっている。
まず、上側からはんだ付けした。
ひっくり返して反対側からも半田付けをした。
このままでは全長が5cmほどで短すぎる。このままではWiFiアクセスポイントで光らない。波長に合わせるようアンテナを延長するためのはんだ付けをした。
アンテナ長が6cmになるように不要部分を除去した。
WiFiアクセスポイントでレクテナが光っているところ
WiFiアクセスポイント上にレクテナが置いて光っているところ見た。表面実装用ダイオード RB751S-40を使ったレクテナの場合を示す。
まず、レクテナをアクセスポイント上に置いたところ。
光っているところは次の通り。アクセスポイントから電波が常時出されているわけでもないので、不規則に点滅をしていた。
上記ではわかりづらいので、照明を落としてみた。
まずは、レクテナのLEDが光っていない状態。
レクテナのLEDが光っているところ。
以前はできなかった光るレクテナを作成できたのですっきりした。